[27] 損害賠償

契約書には必ずと言って良いほど「損害賠償」の条件が規定されます。

これは、一方の当事者(有責当事者)が契約違反をした場合に、相手方に発生した損害を有責当事者が賠償する義務でもあり、また損害を受けた側が有責当事者に賠償請求できる権利でもあります。

ここで重要なのは損害賠償の範囲です。一般的なのは「通常損害」や「直接損害」のみを賠償の範囲とし、その他、「特別損害」「間接損害」「副次的損害」などは賠償範囲からは除外するように定めます。もっとも、これらの用語は法的には明確に定義されていませんので、何が通常で何が特別か、何が直接で何が間接かは、実際に損害賠償請求する際に、相手方と争いになることが多いと思います。

ひとつの考え方としては、相手方の契約違反(債務不履行)により、こちら側に直接的に生じた損害を「直接損害」とし、たとえば機会損失や逸失利益(相手方の契約違反がなければ得られたであろう利益)などは「間接損害」として整理することもできます。とは言え、これらの損害が契約違反と因果関係が強い場合はいずれも「通常損害」になり得ますし、因果関係が弱かったり、普通では発生を想定できない損害は「特別損害」となり得ます。

契約書には全てのケースを列記することはできませんので、曖昧な用語で規定するのは仕方無いとして、外すべきものは明示することが重要かと思います。なお、損害賠償額の上限を定めることもあり、その場合は契約額の総額や契約履行において実際に支払われた金額を上限額とすることが一般的かと思います。

ちなみに契約に損害賠償の条件を定めない場合は、民法第415条、416条に基づき賠償請求することになります。

(民法)

第415条(債務不履行による損害賠償)

  1. 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
  2. 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
    1. 債務の履行が不能であるとき。
    2. 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
    3.  債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

第416条(損害賠償の範囲)

  1.  債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
  2.  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

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