日本の契約書には、必ずと言っていいほど第一審の管轄裁判所を明記します。これは民事訴訟法第11条を根拠としています。
- 当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。
- 前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
- 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
契約当事者間で管轄裁判所を合意して定めると、原則としてその裁判所でしか訴訟を提起できなくなります。なおその合意は、書面又は電磁的記録(たとえば電子メール)でなければならず、口頭での合意は不可です。
具体的な管轄裁判所ですが、契約当事者の所在地が関東であれば「東京地方裁判所」とするケースが多いと思いますし、関西であれば「大阪地方裁判所」を選ぶと思います。地方裁判所は、北海道には4か所、その他の都府県には各1か所ずつあります。
それでは、契約当事者の片方が東京、もう一方が大阪の場合はどうでしょうか。お互いに「東京地方裁判所」「大阪地方裁判所」を主張していたのでは、契約は纏まりません。そのときは、よほど相手方が重要な取引先で譲歩せざるを得ない場合を除き、「被告の本店所在地を管轄する地方裁判所」などとするのが良いと思われます。
ところで、管轄裁判所を契約当事者間で合意していない場合は、民事訴訟法及び裁判所法の定めに従って管轄裁判所が決まります。
- 原告は、原則として被告の住所地を管轄する裁判所に裁判を起こすべきとされていますが、例外があり,たとえば不法行為に基づく損害の賠償を求める裁判では,不法行為が行われた土地を管轄する裁判所に対しても裁判を起こすことができますし、不動産に関する裁判では、問題となる不動産の所在地を管轄する裁判所にも裁判を起こすことができます。
- 140万円以下の請求に係る民事事件については簡易裁判所が、それ以外の一般的な民事事件については地方裁判所が、それぞれ第一審裁判所となります。