今回は、企業間で頻繁に締結されるNDA(Non-Disclosure Agreement:秘密保持契約書)における「秘密情報」について触れてみたいと思います。
NDAは、通常、当事者間で本格的な取引に入る前の検討段階で締結されます。開示された「秘密情報」を目的外に使用したり、第三者へ開示・漏洩しないよう規定しています。なお、NDAには当事者の一方だけが秘密保持義務を負う「片務契約」と、双方ともに秘密保持義務を負う「双務契約」があります。
ここで重要なのは、何が「秘密情報」かということです。秘密保持義務の対象物が明確になっていないと、秘密情報として管理をすることができません。
そこでNDAでは以下のように「秘密情報」を定義することが多いです。
- 「秘密情報」とは、本契約の存在及び内容、並びに本契約の締結及び履行に関連して開示され又は知り得た相手方の技術上又は営業上の情報であって、相手方が秘密であることを明示したものをいう。なお、口頭又は映像その他の方法により開示された情報については、その開示の時に秘密である旨を口頭で伝えられた場合、かつ開示後30日以内に当該情報の概要を記載し秘密である旨を表示した書面が交付された場合に限り、開示の時から秘密情報に含まれるものとする。
- 前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する情報は、秘密情報に該当しない。
- 開示された時に既に受領者が保有していた情報
- 開示された後、受領者が秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
- 開示された後、当該情報に関係なく受領者が独自に取得し又は創出した情報
- 開示された時に既に公知であった情報
- 開示された後、受領者の責めに帰し得ない事由により公知となった情報
第1項は、受領者が管理し易いように、開示者は、秘密情報に「秘密」である旨を明示しましょうとの趣旨の規定です。ただ「受領者が管理し易いように」ということであれば、秘密情報には「秘密」表示だけでなく、根拠となるNDAを特定するための情報(そのNDAの締結年月日など)も明示するのが良いと思うのですが、そこまで規定すると開示者の義務や負担が増えますので、ここは受領者の管理に任せるということかと理解しています。
第2項は、秘密情報として扱わないものの例外事項です。これらは全て受領者側の状況ですが、特に「開示された時に既に受領者が保有していた情報」や「開示された後、当該情報に関係なく受領者が独自に取得し又は創出した情報」については、本当にそうかどうかは受領者しか知り得ません。
そこで、第2項は「前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当することを受領者が証明した情報は、秘密情報に該当しない。」と規定することもあります。受領者に証明させるもので抑止力としては良いのでしょうが、ただ、両者間で争いになった場合、受領者は自らを守るために証明をすることになりますので、特に「証明」について契約に規定していなかったとしても結果は変わらないと思われます。