不可抗力は、天災、戦争、暴動、ストライキ、疫病など、契約当事者が全くコントロールできない事態をいいます。フランス語で「Force Majeure(フォース・マジュール)」といい、特に国際契約には必ずといっていいほど登場します。
通常、不可抗力により契約履行が困難になった場合は履行当事者の責任が免除されるという条件を規定します。ただし、支払義務(支払債務の履行義務)だけは例外扱いとなっている場合が多いです。これは民法第419条第3項の趣旨に従ったものです。
民法 第419条
- 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
- 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
- 第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
すなわち、不可抗力が原因で支払いが遅延したとしても、債務者は損害賠償の責任を負うということです。
なお、これは任意規定ですので、契約においては、支払債務についても不可抗力による場合はその履行義務を免れる(または遅延責任を負わない)と規定することも可能です。
ところで、不可抗力の例として挙げられる「疫病」ですが、最近ではそれと共に「感染症」を併記するケースがあります。私自身、疫病と感染症の違いは分からないのですが、コロナ禍で「感染症」という言葉が広く認識されたからかも知れません。