業務委託契約の代表的なものに「準委任」形式と「請負」形式があります。
「準委任」は、業務の履行自体が目的となるもので、極端に言えば、契約期間中、決められたことをやれば良いというものです。他方「請負」は、業務の結果や成果物について責任を負うものです。
そのため、委託側としては「請負」の方が良いのですが、そのためには契約締結時に成果物に関してきちっと仕様書を取り交わす必要があります。それを元に受託側が業務を遂行するのですが、逆に契約締結時には何をやってもらうかまでは決まったものの、最終的な成果物の仕様が曖昧だったり、成果物が発生しない単なる作業のみの場合は「準委任」となります。
委託側は受託側に責任の重い「請負」にしたい、受託側はなるべく責任の軽い「準委任」にしたいという気持ちで契約交渉に臨むのですが、両者の力関係(通常は委託側が強い。)で、仕様が曖昧なまま納期や契約金額が決められてしまい、請負形式での業務委託契約を締結させられるというケースがあります。
ただその様な事態を回避する方法として「成果完成型」の準委任契約もあります。これは成果物を委託側に納入するという点では「請負」と同じですが、受託側には完成義務が無いため、契約期間内でできたところまでの成果物を納入すれば受託側の責任を果たしたことになります。
ちなみに、「準委任」か「請負」かで、契約書に貼る収入印紙が変わります。準委任は印紙税がかからない不課税文書で、他方請負は「2号文書」という課税文書となり、契約書がどちらの形式に属するかは結構重要です。なお、単に契約書の表題や本文に「準委任」と記載したのではダメで、印紙税調査の際、契約条件によってどちらの形式かが税務官により判断されます。
蛇足ながら、「準委任」は「委任」に準じた委託行為です。「委任」は民法第643条に規定されているとおり「法律行為」を行うことを委託するものです。具体的な例としては、訴訟などで弁護士を代理人として委任する行為があります。
民法 第643条(委任)
- 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
これに対し、通常のビジネスにおいて行われる「準委任」は、民法第656条に規定するように「法律行為でない事務の委託」をいいます。
民法 第656条(準委任)
- この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。