ひとつの契約書の中で同じ言葉が繰り返し使われるときは、最初にその言葉が出てきたときにそれを簡単な単語に置き換え、以後はその単語を使うことで契約書を簡潔にし読み易くします。代表的な例としては、契約書の冒頭でそれぞれの契約当事者名を甲、乙などに置き換え、契約本文中にはいちいち契約当事者名を書かずに、甲、乙で済ませます。
例:○○株式会社(以下「甲」という。)と△△株式会社(以下「乙」という。)は、甲の行う□□業務に関し、次のとおり業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。
契約当事者のうち、どちらを「甲」でどちらを「乙」にするかは自由ですが、お客様を「甲」にしたり、業務委託契約書の場合は委託側を「甲」にするのが一般的です。
当事者が3者以上いる場合は、甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、庚(かい)・・・などの順で割り振ります。以前、7者協業契約を担当した際はこのようにしましたが、そもそも協業契約の場合は全ての当事者が等しく責任を負う場合が多いため、せっかくこのように割り振っても、契約本文中では「全ての当事者は」「各当事者は」「いずれの当事者も」などの表現に留まり、甲~庚への割り振りは余り意味がないこともあります。
ただ、契約書末尾の署名欄には、「甲 〇〇株式会社」「乙 △△株式会社」などと書きますので、ここでは再度、甲~庚が現われます。
以上、契約当事者を省略するケースを説明しましたが、この他の例として業務委託契約書では、委託業務を列記し(以下「本業務」という。)などと纏める使い方もあります。
なお、「以下「〇〇」という。」と書く場合、人によって
- 以下、「〇〇」という。
- 以下、「〇〇」という
- 以下「〇〇」という
- 以下、〇〇という。
- 以下、〇〇という
- 以下〇〇という
と様々で、趣味の世界と言ってしまえばそれまでなのですが、省略語を明確にするためには鉤括弧で括るのが良いですし、「以下」の次は鉤括弧がくるため読点は不要と思われ、「という」は用言止めで句点が必要と思われることにより、私が一から契約書を書く場合は「以下「〇〇」という。」としています。