bookmark_border[39] 英文契約で権利・義務を表す助動詞

英文契約で権利(~することができる)を表す助動詞は「may」です。「can」は権利ではなく能力を表しますので、契約書ではほぼ使われません。mayの否定語(~することはできない=権利が無い)は、「may not」となります。

他方、義務(~しなければならない)では「shall」が使われることが多いですが「will」でも良いです。ただし同じ契約書の中で「shall」と「will」が混在して使われるときは「shall」が義務、「will」はニュアンスが弱く通常のwill(意思)のようになりますので注意が必要です。

 

bookmark_border[38] Wordファイル流用時の注意点

これまでのブログ記事で紹介したかどうか失念しましたが、契約書(案)をパソコンで作成する際、似たような既存の契約書データファイルを流用することがあります。それはそれで良いのですが、その際、既存ファイルのプロパティ情報をきちんと消さないと、その契約書の相手方情報などがそのまま残ってしまい情報漏洩となるおそれがあります。

私が使っているWordでは、「ファイル」→「情報」をクリックしていくと画面の右側にその文書ファイルのプロパティが表示されます。

プロパティ情報は、「ファイル」→「情報」→「文書の検査」→「ドキュメント検査」→「検査」→「ドキュメントのプロパティと個人情報」の「すべて削除」をクリックすると綺麗に削除されます。

 

bookmark_border[37] 「清算」と「精算」

「清算」と「精算」はよく混同して使われる言葉です。

「清算」は、「会社清算」や「関係の清算」などのように、何かを綺麗さっぱり解消させ整理することをいいます。

また「精算」は、金額を細かく計算すること、又は計算し直すことをいいます。

この様に、これらは意味が異なりますので、契約書作成の際には間違えないようにしなければなりません。

bookmark_border[36] リキダメ

「リキダメ」とは、国際契約に出てくるLiquidated Damagesを日本語風に略した言葉で、損害賠償の予定のことです。

納入遅延等、きちんと契約を履行できなかった場合の損害賠償額や、中途解約等による違約金の額を予め契約書に定めておくことがありますが、主にこれらをリキダメと呼んでいます。

国際契約においては、契約当事者間で制裁金(ペナルティ)を課すことが禁じられていることが多く、上記金額が通常の損害賠償額に比べて法外に高い場合はペナルティとみなされ、リキダメ条項が無効になることがあります。ちなみに、契約書に「これはペナルティではなく損害賠償額の予定とする。」と規定しても意味がありません。

国内の契約ではペナルティに関しては特に禁止されていませんが、国際契約ではこの部分は留意する必要があります。

bookmark_border[35] 遅延損害金 年率14.6%の意義

「遅延損害金」とは、契約書に定めた支払期限までに支払いがなされない場合に損害賠償として相手方に支払う金銭のことで、通常は年利の形で定められます。一般に金銭を受領する側がひな型として準備する契約書には、年率14.6%と規定されていることが多い印象です。

契約交渉の中でその率を変えることはありますが、そもそも契約条件どおりにきちんと支払をするのであれば遅延損害金は発生しませんので、この部分が大きな論点になることは無いと思います。ただこれは相手方との関係によりますね。注意すべきなのは取引の相手方が下請法(下請代金支払遅延等防止法)適用会社の場合です。「下請代金支払遅延等防止法第4条の2の規定による遅延利息の率を定める規則」に、「下請代金の支払遅延に対する遅延利息の率は年14.6%」と規定されています。

なお、(下請法適用会社以外で)契約に遅延損害金が規定されていない場合は、民法で規定されている「法定利率」に従いますので、支払が遅れた場合、契約書に規定されていないからと言って、遅延損害金の支払いを免れることはできず請求可能です。

ちなみに契約に規定された料率、すなわち「約定利率」が「法定利率」よりも大きい場合は、約定利率を使います。

法定利率の規定は以下のとおりです。

民法 第404条

  1. 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
  2. 法定利率は、年3パーセントとする。
  3. 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
  4. 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
  5. 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0.1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

この様に、基準は年3%なのですが変動を許容する規定となっており、法務省は「令和5年4月1日以降の法定利率について」というサイトで令和8年3月末までは「3%」と公表しています。

蛇足ながら、14.6%というのは、昔の「日歩4銭(100円につき一日あたり0.04円)」から来ているそうです。(0.04円/日 X 365日 = 14.6円)その流れかどうか分かりませんが、税法上の延滞税も一定の減免はあるものの基本は14.6%です。

それから、利率の上限は「利息制限法」や「消費者契約法」に定められています。利息制限法は「金銭消費貸借契約」すなわち金銭を貸し借りするときの利率について第1条で規定しており、元本の金額により異なりますが100万円以上の場合は年15%です。なお、金銭の返済が遅れた場合の遅滞金を算出する際の利率は第4条で規定しており、金銭消費貸借契約における約定利率としてはこれ以下に抑える必要があります。ちなみに金銭を貸すことを業として行ういわゆる「営業的金銭消費貸借」の場合は、利息制限法において別の規定がありますので注意が必要です。

利息制限法 第1条

金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。

  1. 元本の額が10万円未満の場合 年2割
  2. 元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分
  3. 元本の額が100万円以上の場合 年1割5分
利息制限法 第4条
  1. 金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第1条に規定する率の1.46倍を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
  2. 前項の規定の適用については、違約金は、賠償額の予定とみなす。

また消費者契約法は、契約相手方が一般消費者の場合に適用され、その中で遅延損害金の上限を年率14.6%と定めています。

消費者契約法 第9条
  1. 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
    1. 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
    2. 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
  2. (省略)

この様に、契約相手方が法人、団体、個人事業主、一般消費者のいずれの場合であっても、金額の多寡によらず「年14.6%」に抑えておけば法令に違反することはありませんので、金銭を受領する側としてはこの料率を契約交渉の起点とする意義は大きいと思います。

bookmark_border[34] 完全合意条項

「完全合意条項」とは、その契約書に規定されている内容が全てであり、この契約と同じ目的で契約締結前に当事者間で合意された事項は無効となる、という条項です。

そのため、契約の解釈において曖昧さや疑義が無くなる反面、契約条件を事細かに多岐に渡って規定する必要があるため、国内の契約ではあまり一般的ではありません。

他方、国際契約ではこれは「Entire Agreement」条項といい、ほぼ標準条件として規定されています。

日本の場合は、取引において商習慣や紳士協定など今でも重視されますし、契約書に規定されていない事項は民法に従って判断されますので、あまり必要のない条項なのかも知れません。逆にその条項が入ることで、契約の履行に支障が生じる場合が多いと思います。

ただ、M&Aなど重要な契約書は疑義が生じることのないように詳細に条件を定めるため、完全合意条項が規定されるケースが多いですね。

 

 

bookmark_border[33] 契約書の用紙

契約を書面で締結する際に使用する用紙ですが、通常はA4サイズの上質紙になると思います。

基本は片面印刷ですが、2ページに収まるものは両面印刷とし、またA3サイズ1枚に収まるものはそのようにして、なるべく複数の枚数に渡らないようにするのがコストが抑えられますし製本も不要で効率的です。

ただし、文字サイズを小さくし過ぎないようにすることも重要です。

紙質については、契約書は年単位で、場合によっては何十年もの期間に渡って使われますので、その間に紙面がボロボロになり原本としての役目を果たさなくなっては困りますので白の上質紙がお勧めですが、最近は再生紙であっても質が良くなっていますので、そこはあまり気にすることは無いかも知れません。

bookmark_border[32] 承継とは

「承継」とは、自身の権利義務や資産などを他者に移転することをいいます。代表的なものに「相続」があります。

相続は、人(自然人)が死亡した時点で保有していたものが相続人に帰属します。この場合、法的には全てが相続人に移転するため「包括承継」又は「一般承継」と呼ばれます。

法人の場合も、「合併」により他の会社に吸収された時点で全てがそちらに移り包括承継(一般承継)がなされます。

他方、売買や事業譲渡など、保有する権利義務や資産の一部のみを他者に移転する場合の承継は「特定承継」と呼ばれます。当事者間で何を承継するかは協議のうえ決定しますので、売買契約書や譲渡契約書において承継対象物を明記し特定することになります。

 

 

 

 

bookmark_border[31] 前二項の規定にかかわらず

契約書では良く、前の条項を否定する条件を次の条項に書くことがあります。

  1. 〇〇〇は、〇〇するものとする。
  2. 前項の規定にかかわらず、□□□の場合は□□とする。

このように「かかわらず」という文言を使い、特定の条件のもとに前項を否定します。「かかわらず」は漢字で書くと「拘わらず」ですが、契約書ではかな書きします。

次に、否定する条項が直前に2つある場合は以下のようにします。

  1. 〇〇〇は、〇〇するものとする。
  2. △△△は、△△するものとする。
  3. 前二項の規定にかかわらず、□□□の場合は□□とする。

「前二項」は、前の二つの条項を指します。これは「第1項及び前項」や「第1項及び第2項」と同義です。

「前2項」と書いても良いのですが、「第2項」と誤解され易いため、私は漢数字の「前二項」を使っています。

 

bookmark_border[30] 国際契約における「印紙税」

以前ご紹介した収入印紙(印紙税)について、国際契約との関係を補足したいと思います。

国際契約の印紙税の扱いですが、「締結地」の法令に従うことになります。たとえば「締結地」が日本であれば、印紙税法に基づきその契約書が課税文書かどうか判断し、その結果、課税文書であれば収入印紙の貼付・消印をもって納税します。これは契約当事者全ての契約書原本も同様です。

他方、締結地が日本以外であれば、少なくとも日本の印紙税法は適用されません。しかし締結地の法令が適用されますので、そこは留意が必要です。

なお、契約は当事者全てが記名押印又は署名することで締結となりますので、最後に記名押印又は署名した場所(国)が締結地です。そのため、日本側当事者が先に記名押印又は署名し、外国にいる相手方に渡してその地で締結すれば、日本における課税文書でないことになります。

ところで国税庁の下記サイトには、「契約書上に作成場所を記載するとか、契約書上作成場所が記載されていなければその事実を付記しておく等の措置が必要になります。」との記載がありますが、ここで「作成場所」とは、契約書の場合は「締結地」と同義です。

外国で作成される契約書|国税庁 (nta.go.jp)